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自転車を漕ぎ、片田舎のどこまでも続く田園風景を脇目に夜道を帰っていた。
暗黒に響くのは、蛙達の大合唱と時折、風でかさかさと音を立てて揺れる稲穂だけだった。
お決まりの帰路を陽気に鼻歌混じりに行く彼の名は、常磐哲。彼が齢十八の夏の事である。
この、清条ヶ丘には最近できた新興住宅地と、その奥まった山手に古くから立ち並ぶ古民家の地帯、
それを大きく取り囲むように田畑が広がっていた。
彼が住んでいるのは、古民家地帯の中でも長らくこの地を仕切ってきた『常磐』の本家である。
それ故に無駄に奥まった所にあった。舗装された真新しい道路を抜けて、むき出しの山道へと差し掛かり
ほんのり勾配も出てきたその時ふと目前の街路灯が消えた。
あの夜、僕らは三人で舞台に立って旗揚げ公演の緊張の中「フラクタル」を演じました。
目の前の事とこれからの事に頭が一杯になっていた僕らと
青春の目まぐるしい日々の中で決別し、離れ離れになった彼らの姿は
舞台の上で一つに重なって見えていました
その後、未曽有の事態が起き、僕らの歩みはちぐはぐになって
また、再びスタートラインに立つ機会を何度も伺う事になりました。
この幻創Pocketの始まりはこのフラクタルであって欲しい
だからこそ、もう一度スタートを切るなら
このフラクタルをもう一度・・・
フラクタル再演に向けて
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